こんにちは。
今回はアントワーヌ・ローランの「青いパステル画の男」を読んだので、その感想を書いていこうと思います。
日本では
「ミッテランの帽子」→「赤いモレスキンの女」→「青いパステル画の男」
の順で出版されているけれど、実はこれがローランの出発点。
青いパステル画の男(2007)
ミッテランの帽子(2012)
赤いモレスキンの女(2020)
パリらしい骨董品や、
オークションハウスのドゥルオー(Hôtel Drouot)
紋章
マンドラゴラという植物
フランス革命期など
150ページもないけれど、古いものやフランスの歴史に関することがたくさん出てくるお話です。
ラストは思ってもいない展開で、少々戸惑いましたが・・・。
夢かな?と思ったけれど現実みたい。
すべては自分そっくりの肖像画に出会ったことから始まります。
もくじ
登場人物
- ショーモン:パリの弁護士
- シャルロット:妻
- エドガー叔父さん:同じ骨董コレクター
- バレッティ:ドクター
エドガー叔父さんの影響で本物のコレクターへと目覚める
まだ子どもだった頃、主人公のショーモンは消しゴム集めにハマっていた。
そんなショーモンに父の兄であるエドガー叔父さんは言う。
「坊や、知性と論理を以って見るんだよ」
ポケットから取り出したオブジェを見せ、その特性を教えていく。
- 秘密の仕掛け
- 二重活用法
- 隠された用途
ショーモンはこれらに心躍らされます。もっと見たい!
そしてさらに、
「本物のオブジェは、持っていた人の記憶を抱えているんだよ」
とも教えてもらう。
ショーモンは頷き、古いものには魂があると理解する。
こうやってエドガー叔父さんの洗礼を受け、本物のコレクターへの第一歩を踏み出す。
自分そっくりの肖像画に出会う
大人になり、ずっと通っていたオークションハウスの展示室で、ふと1枚の肖像画に目が止まる。
この絵は肖像画に紋章まで描いてあるのにモデルは不明という。
しかも画家の名前もわかっていないと言う匿名作品。
しかしその絵を見れば見るほど、鼻も唇も耳も完璧なまでに自分にそっくり・・。
これはなんとしても手に入れたい!
さっそくデスクの人に価格を聞いてみると、値は張るが手が出せない額ではない。
そうなるとこれは絶対に他の者へは渡せない。
急いで準備し、オークションに参加する。
ついに落札したが
競りに勝ち、事前価格から5倍ほどの値になったが、手に入れた喜びで胸がいっぱいのショーモン。
これを見た妻はなんと言うだろう。
あなたにそっくりね、と驚いてくれるだろうか?
早く反応を知りたい。
しかし、妻とは大喧嘩になってしまう。
骨董に興味のない妻からすると、名もなき作品に大金を注ぐ夫に腹が立つのでしょう。
この一件でショーモンは誓う。
もう絵は誰にも見せない。自分だけのコレクションにする。
紋章のルーツをさぐる
肖像画に紋章があるのだから、辿っていけば誰だか判明するのでは?
そう考えたショーモンはWebサイトや資料や辞書を駆使して調べ始めます。
特徴は
- 左側に後ろ足で立つ黒猫
- 中世風の剣と対峙
- 右側に人の形のにんじんらしきもの
- 猫と剣の背景は白地
- にんじんの背景は黒地
そしてついに紋章に辿り着きます。
そこに大きく関わっていたのが「マンドラゴラ」という植物。
調べていくといろんなことがわかってきます。
この絵の起源を知りたい!
ショーモンは現場に行くことを決めます。
マンドラゴラの領地・リヴァイユ村へ行く
ここからは、ちょっとスピード感が増し、ミステリーっぽい要素も出てきます。
ショーモンはある夫人に会い、この肖像画の男は誰なのかを尋ねます。
肖像画の男はフランス革命期の恐怖政治を生き、ルイ十六世とも親交のあった人物。
その男の素性を知れば知るほど、ギュッと締めつけられ頭がクラクラしてくるショーモン。
まさかそんな・・・・。
ここからラストまでが驚きの展開です。
まとめ
ストーリーは前半と後半の二部構成。
骨董に興味がないと少々ついていけなくなるかもですが、後半では乗ってきます。
紋章っておもしろいですね、いろんな歴史が込められています。
そして翻訳者の吉田洋之さんの13ページにも及ぶ「あとがき」が今回もとても素晴らしく、ルイ十六世やギロチンの話も出てきてとても面白かったです。
アントワーヌ・ローランのそのほかの作品もレビューしています。よろしかったら読んでみてください。
それではまた。
タイトル:青いパステル画の男
原 題:AILLEURS SI J’Y SUIS
著 者:Antoine Laurain
訳 者:吉田洋之
出版社:新潮社
発売日:2022年12月21日
単行本:156ページ