こんにちは。ルーシーです。
アメリカの作家ディーリア・オーエンズの小説「ザリガニの鳴くところ」を読みました。
この小説は、ノースカロライナ州の湿地に住む少女カイアの孤独と孤立に苦しむ6歳から64歳までの生涯を追いかける物語になっています。
カイアは小学生に当たる年齢から1人で生きることになり、生活費も自分でなんとかしなくてはならなくなります。まだ幼い少女がどうやって生きていくのか・・・。
著 者:ディーリア・オーエンズ
翻 訳:友廣純
出版社:早川書房
発売日:2020年3月15日
ページ数512ページ
登場人物
- カイア ・5人きょうだいの末っ子
- ジェイク・父
- マリア ・母
- ジョディ・いちばん歳の近い兄
- テイト ・ジョディの友人
ザリガニの鳴くところとは
茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所
引用「ザリガニの鳴くところ」P155より
カイアの住む湿地帯
そこはオークの林がうっそうと潟湖を取り囲み、その周りにはたくさんの生き物が生息している。そのため多くの無法者たちも住み着いていて、村の人々も避けているようなところです。
家族が次々に出ていく
カイアが6歳のとき
- 最初に母親が出て行き
- その数週間後に4人の兄弟姉も次々に出て行き
そして最後は残された父との2人暮らしになりました。
ですが父との関係は良くありません。
なるべく顔を合わせなくてすむように時間をずらして暮らすようになります。
数年たったある日、突然母から手紙が届きました。
それを読んだ父親は激怒し家を出ていってしまいました。
ついには父親もいなくなり、カイアは1人で沼地で生きていくことに。
学校に行かない
ずっと学校に行っていなかったためカイアは字が読めません。
29以降の数字さえも知らないままです。
一応の決まりで補導員が指導に来て学校に行かされたこともありましたが、クラスの子からは湿地のメンドリ、湿地のネズミなどと呼ばれ見下され、耐えきれずに1日で学校から逃げ出します。
自分の生活費を稼ぐ
そんなカイアには湿地だけが自分の居場所。湿地の中で育ち自然に親しむようになっていきます。
父親がいる頃は1週間ごとに生活費を1ドルと数枚のコインもらっていましたが、今では自分で稼がなければ生きてはいけなくなりました。
何をお金に変えたらいいのか考えたあげく、ムール貝をとって近くの店に売りにいくことを思いつきます。
運よく店の店主との交渉が成立し、これでなんとか生活ができるようになりました。
年頃になり恋をする
孤独となったカイアには湿地の生き物だけが友だち。
中でも親友はカモメたちです。
生活必需品以外は買わないカイア。
服もずっと母のものをを着ていましたが、それもサイズがぴったり合うくらいに成長してきました。
そんなある日、湿地で1人の少年に出会います。
その少年は兄の友人テイトでした。テイトもまた自然や生物が好きで、カイアとは徐々に仲良くなっていきます。
そしてテイトは文字を読めないカイヤに読み書きを教えてあげるようになります。
男の死体が見つかる
平和だった日々の中、カイアの住む湿地帯で男の死体が発見されました。
その男は村の裕福な青年チェイス。
死んだチェイスの上着から他者のものと見られる赤い羊毛の繊維が見つかり、
殺人事件へと発展していきます。
そもそも住む世界が違うのでチェイスとはなんの接点もないはずですが、
湿地に住むカイアはなにかと疑われ容疑者にされてしまいます。
まさかの事件に巻き込まれてしまったカイア。
殺人の容疑を晴らすことができるのでしょうか。
この辺りから一気にスリルと緊張が増してきます。
まとめと感想
幼い少女を置いて出ていってしまう家族の行動は耐え難いものがありました。
ですが母には母の、兄姉弟には兄姉弟の、
父には父の思いと理由があるというのもわからないわけではないです。
なんとも厳しい話です。
ほぼ野生児だったカイアは、自然の中で生存能力を身につけながら成長していきました。
物語は生きる厳しさをこれでもかと投げかけてきます。
自然界には秩序があり、その残酷さは生き延びるため、そこに善悪はない。
では人間界の残酷さとはどういうものなのか?
それらのことが心に深く残る一冊となりました。
それではまた。