こんにちは。ルーシーです。
アントワーヌローランの『ミッテランの帽子』を読みました。
この物語は、当時のフランス大統領フランソワ・ミッテランが議会総選挙で大敗し、
再び返り咲くまでの1986年から1988年の2年間が背景になっています。
そのミッテラン氏の帽子がリレーのバトンのように次々と人の手に渡っていき、その人たちの人生に変化を与えていきます。
帽子は帽子でしかないけれど、偶然手に入れたことに意味をもたせると、思考が変わり行動も変わり再び人生が返り咲いていく。
人生の分岐点で起きていることはこういうことかも。と思えるお話です。
主な登場人物
- ミッテラン:元フランス大統領
- ダニエル :最初の帽子の拾い主
- ファニー :2番目の拾い主
- ピエール :3番目の拾い主
- ベルナール:4番目の拾い主
前半あらすじ|帽子がもたらす魔法のはじまり
1986年11月のある日、
パリのブラッスリーで、ダニエルはミッテランの隣の席で食事をしていました。
ブルターニュ産のマガキ、ヒラガキ、イチョウガニ、ハマグリ
クルマエビ、ラングスティーヌ、つぶ貝、小エビ、アサリ
アマンド貝、タニシ、それにブルゴーニュ産の白ワイン・・・
この偶然に心躍るダニエル。
そして会食が終わったミッテランは、帽子を忘れて店を出ていきます。
ミッテランの忘れ物に気がついたダニエルは、なんと自分のものかのようにその帽子を被って帰ってしまいます。
ミッテランの帽子なので大事に大事に使っていたら、人生が好転するようないいことが起きていきました。
だけどある日、ダニエルは電車の中にうっかり帽子を忘れてきてしまい、予期せず手放すことになってしまいます。
次に帽子を拾ったのは作家志望のファニー。
外は雨、列車に忘れてあった帽子を見つけ、傘がわりに持っていく。
ファニーも帽子を手にした日から心の中に変化が起き、ある問題に決着をつける。
3番目の持ち主は、調香師ピエール。
スランプに陥り新作の香水が8年も作れずにいる。
精神科に通うが一向に良くならない。
4番目はブルジョア階級の紳士、
退屈しているヴェルナールへと渡っていく。
感想とまとめ
この物語は、帽子が誰かの日常や悩みにそっと寄り添う、魔法のアイテムのように描かれています。
ミッテランや4人にとってはそれが帽子であったけれど、私やあなたや誰かにとっても、そういう魔法のアイテムがあるかもしれない。
そう思うだけで楽しくなるストーリーでした。
それではまた。
原題:Le Chapeau de Mitterrand
邦題:ミッテランの帽子
著者:Antoine Laurain /アントワーヌ・ローラン
翻訳:吉田洋之
出版社:新潮クレスト・ブックス
発売日:2018年12月26日
単行本:195ページ