こんにちは。ルーシーです。
イタリアの小説『読書セラピスト』を読みました。
この本は悩みを抱えている人の話を親身になって聞き取り、その悩みに応じた本を処方する職業の人の話・・・
なのですが、そこにはある女性読書家の失踪事件もからんできます。
タイトルを見た時はセラピーの話かと思っていましたが、軸としてはミステリです。

それと、
この本はデンマークの画家ハマスホイ(ハンマースホイ)の1898年の作品
「読書する若い男のいる室内」が表紙になっていてとても素敵です。
主な登場人物
- 新米読書セラピスト・ヴィンチェ
- 失踪した女性・パロディー夫人
- 本屋の店主・エミリアーノ
あらすじ
元国語講師のヴィンチェは、読書セラピストとして個人事務所を立ち上げた。
そこに最初のクライアントがやってきた。
第一号は「自分の居場所がない」という感覚を持っている女子大生。
特に自分の髪質に悩んでいる。どんな本が私の助けになるのか教えてくださいという。
ヴィンチェはある1冊を紹介する。
ところがこの本は女子大生をたいへん激怒させてしまうことになる。
なんでこんな本をすすめるのよ!と。

ヴィンチェの初仕事は粉々に砕け散る。
ほどなくして、下の階に住むパロディー夫人が失踪したということで、警察が聞き込みにやって来る。
状況証拠からパロディー夫人の夫に殺人の容疑がかけられているらしい。
ヴィンチェは引っ越してきたばかりなので夫人や夫のことはよく知らない。
ただしヴィンチェも夫人もエミリアーノの本屋の常連だったため、夫人が書き残していた本のリストを見つける。何か意味があるのだろうか。

ヴィンチェはこれを手掛かりに事件解明へと動き出す。
セラピストとしての選書の難しさ
いくら読書が好きでも、悩みに寄りそうものを選んであげるのは難しいことですね。
だって相手はお金を払って来ているわけです。本を選んで欲しいというよりも、まずは話を聞いてほしい。
その上でなぜ「その本」を私に奨めてくれたのか?という根拠を知りたい。
つまり理解してくれているという安心感が欲しい。
だから選書の説明に違和感を覚えると怒りになってしまう。
一方セラピスト側も、この本を最後まで読んでもらえたら、きっと答えが見つかりますよ。と思っていても、その前に拒否されたら終わりになってしまう。
まずは深い傾聴が必要ですね。
新米読書セラピストのヴィンチェ。さて次はどんな方がやってくるのでしょう。
このミステリの根底に流れる「ウェイクフィールド」
読んでいるとちょくちょくこの「ウェイクフィールド」という本のことが出てきます。
『ウェイクフィールド』が『読書セラピスト』のベースになっている感じです。
私は知らないまま読了したのでちょっとモヤモヤ・・・。
なのでそれを解消するために読んでみました。
いやこれもまた不思議なストーリー!
「ウェイクフィールド」とは1835年に発表されたアメリカの作家ナサニエル・ホーソーンの短編物語の中の1つです。ウェイクフィールドさんという夫から見たストーリー。本当に短くって15ページほどです。
それともう一つ、
E・ベルティというアルゼンチンの作家さんが約150年後に書いた「ウェイクフィールドの妻」という妻から見たストーリーが書かれた本もあります。
これがもうほんとうに面白くて!
15ページの短編を、200ページにまで膨らませることができるなんてすごいです。
私はヴィンチェさんから間接的にこの2冊を処方してもらうことになりました。
失踪事件
人間は、穏やかに見えていても、背後には別の現実を隠し持っている。

だから簡単には読み解けません。
ヴィンチェはパロディー夫人の残した本のリストから、文学的に謎を解き明かそうとします。
警察の捜査と違うところは、この文学的に解こうとするところです。
まとめ
この本は、「読書セラピー」と「文学的謎解き」の2つの風景を味わえる本です。
書籍名もたくさん出て来ます。
私も数冊ピックアップしました。
異国の本がほとんどですが、1冊日本の本もありました。
それは表紙の帯にも書いてありましたが小川糸さんの「あつあつを召し上がれ」です。
それではまた!
