読書感想『死の森の犬たち』DOGS of the DEAD LANDS

『死の森の犬たち』

アンソニー・マゴーワン作「死の森の犬たち」を読みました。

原題『DOGS of the DEAD LANDS

著者:Anthony McGowan

(イギリス・マンチェスター生まれ)

この物語の主な舞台は、旧ソビエト連邦ウクライナ共和国のプリピャチ。

1986年4月26日、プリピャチにあるチェルノブイリ原子力発電所の4号炉が爆発。

それにより放射性物質が大量に放出され、区域内に住む住人は避難を命じられる。

しかし、ペットは連れて行ってはいけない・・・・。

女の子のペットはまだまだ小さな子犬。

置き去りにされるその子犬はどう生きていくんだろう・・・・

表紙の犬が、置き去りにされたワンコになるのかな・・・など想像しながら読み始めました。

動物たちの原生林での生活

爆発後、人が一切入らなくなった森は、動物たちにとって最高の楽園となる。

確かに楽園ではあるけれど、でも、動物たちは常に食うか食われるかの毎日。

どんな時も、風に漂う匂いや音、気配、全てに敏感でいなければ捕食されてしまう。

森に登場する動物たちの攻防戦は、本当にそのようなことを考えながら狩りをしているんだろうなと、信じてしまうくらいリアルに描かれています。

ペットとしての生涯、

野生動物としての生涯、

どちらが良い、悪いはないけれど、様々なことを考えながら読んでいきました。

人間の失敗、動物の失敗

人間が何かを失敗した時って、

ほとんどの場合、自分の意識次第で次のチャンスへと繋げていくことができますよね。

反省したり、失敗を糧に次へと活かしたり・・・。

でも野生動物の失敗は死が待っている。

食物連鎖という自然界の掟。命のやり取り。

それが読んでいて容赦無く伝わってきます。

人間の森の生活

避難せず、森に住むことを選んだ人がいる。

実際に森に住むのはきっと大変でしょう。

だけどその生き方は、家畜や四季の恵みを活かした無駄のない生活。

生活ゴミがほとんどでない。

野生の動物と同じで、自然の摂理に沿った生き方です。

孤独という寂しさはあるけれど、どこか潔い。

人間と動物の心のつながり

人と動物の心のつながりは、ペットを飼ったことがあるならばそれは実感できることでしょう。

でもそれが野生の動物だったらどうでしょう。

野生の動物の警戒心は自分の命を守るため。

その気持ちがゆるければ、生き残ってはいけないし子孫も残せない。

死の森のような、人間が入ってこれない場所で育った動物たちは、何かの拍子に人間界に紛れ込んだ時、生きるためにどう順応していくのか。

そういうことを自然と考えてしまう物語でした。

この『死の森の犬たち』は子犬と少女の22年を追った物語です。

野生動物の生きる強さ、心情、を感じてみたい方は、きっと好きになる本だと思います。