本屋さんで目を引く特別コーナーが設けられ、熱のこもった手書きPOPが目立っていた『未必のマクベス』
その場は素通りできないほどの存在感を醸し出していました。
その力強い推薦文に心が動かされ、さらにタイトルに「マクベス」の名が含まれているのも妙に気になり、読んでみることにしました。
シェイクスピアの名作と関連があるのか、それとも全く新しい視点で描かれた物語なのか、約600ページと分厚いけれど、ワクワクを胸に秘めて読書開始です。
物語の舞台はアジア
主人公は日本のIT企業に勤める男性。
東南アジアが取引先なのでほぼ外国暮らし。
- 香港
- 澳門(マカオ)
- 台北
- シンガポール
- バンコク
- クアラルンプール
- ベトナム
などの都市を駆け巡っています。
といっても拠点は香港とマカオ。
香港でのホテル暮らしの様子や、雲呑麺(ワンタンメン)を食べにいく様子などは、憧れを抱く光景です。
タイトルの「未必」とは
「未必/みひつ」を辞書で調べると、単独では出て来ず「未必の故意」と出てきます。
みひつのこい【未必の故意】
法律で、犯罪を犯すことを積極的に意図するものではないが、自分の行為によって実害が発生するかもしれないと思い、また、発生してもかまわないと認識してその行為に及ぶ場合の心理状態をいう。
明鏡国語辞典
巻末の解説にも下記のように書かれていました。
「マクベスになりたいわけではないが、なってもかまわない」ということだろう。
P610の解説より抜粋
マクベスの話を聞いているうちに、あるいは、あなたはマクベスのようだと何度か聞かされていくうちに、無意識に自分にセットされていく感じなのでしょう。
恋愛小説としての要素
主人公の男性は38歳。
この小説は、犯罪小説にして痛切なる恋愛小説とのこと。
高校生の頃好きだった女の子・・・というかその頃はまだ自覚がなかったので、恋愛と呼べるのかわからない感情が、22年の時を経て蘇る。
なんとなく消滅してしまった恋って、
普段は全然思い出すことがなくても、誰かのふとした仕草や言葉などが引き金になり、急に思い出されてしまう。
そういうことってありそうです。
そう、うまくその流れに乗ってストーリーは展開していきます。
読了して
犯罪小説でもあるので色々ややこしいことが起きるのです。
それを回避する方法に「ちょっと待って!」「それしかないのですか?」
と、小説だということを忘れ、割と本気でつぶやいていました。
そう思うくらい展開が早く、次々とシーンへが移り変わっていく。
とても読み応えのある小説でした。
香港マカオに仕事や旅行でよく行く人には、土地や名物の情景も浮かびやすく、さらに楽しめる1冊だと思います。