こんにちは。ルーシーです。
イギリスの作家フランシス・ハーディングの『嘘の木』を読みました。
この小説は19世紀、ダーウィンの「種の起源」発表後の英国が舞台。
一人の高名な博物学者に怪しげな噂が立ち、一家は今いるケントから逃げるようにヴェイン島に移り住むことになります。
しかしその噂も島にまで広がり始め、ついには殺人事件まで起きてしまう。
事件の真相を探るのは賢い14歳の少女フェイス。
これはその少女が宗教や科学、嘘まみれの世界に知識と勇気で立ち向かうダークなファンタージーものがたりです。
著 者:フランシス・ハーディング
原 題:THE LIE TREE
翻 訳:児玉敦子
出版社:東京創元社
単行本発売日:2017年10月21日
文庫本発売日:2022年5月18日
ページ数:414ページ
主な登場人物
- フェイス:博物学好きな14歳の女の子
- エラスムス:父 博物学者
- マートル:母
- ハワード:弟
フェイスの生きた時代
イングランドに住む知的好奇心旺盛な少女フェイス。
9歳になるころには父の難しい本が理解できるようになり、自分の賢さを周りの大人に証明したくてたまらなくなります。
ですが知識を人前で披露すると周りからうとまれ、そのうちに無視されるようになっていきます。
この頃のイギリスは、まだ女性には教育の機会が限られており、社会的・経済的制約により、自分たちが望むような学問の道に進むことができませんでした。
父の日記
ある日、フェイスの父親が突然死んでしまいます。
フェイスは父親の死に疑問を抱き、その真相を探ろうとします。
そこでフェイスは父が残した日記で、父が「偽りの木」と呼ばれる不思議な植物について研究していたことを知ります。
そこに描かれている内容は、まるでおとぎ話しのようでフェイスは戸惑います。
嘘の木ってなに?
嘘の実ってなに?
日記の内容は信じ難いことだけど、父の死の真相を知るには、ここに書かれていることを証明するしかない。
「嘘」について
この小説は「嘘」が最も大きなテーマになっています。
父の日記には
「人が信じたがる嘘を選べ」
「何かを信じて欲しいときは、ヒントを与え、ちらりと見せるだけでよい」
「苦労して手に入れたものほど人は信じるものだ」
など、心理的なものがたくさん書かれています。
父自身も何か大きな嘘をついているのでしょうか。
真実
後半は展開も早く、スリリングに真相へと近づいていきます。
真実と嘘との間で揺れ動くフェイスが、父の死の謎を自分一人の力で追求する姿は特に印象的です。
また、嘘の木というファンタジー的な要素も、物語に深みを与えています。
まとめと感想
「嘘の木」は社会的な女性差別や偏見、科学と宗教の対立など、多くのテーマを探求しています。
フェイスは父の死の謎を追い、周りの人々が抱える秘密を暴き、自分自身を見つめ直す中で成長していきます。
嘘と真実の共存。それを見事に描いた小説だと思いました。
それではまた。