感想『ほんとうの名前は教えない』最初の嘘がすべてを決める

アシュリィ・エルストンによるほんとうの名前は教えない』(原題:First Lie Wins)は、心理的な駆け引きと緊迫感あふれる展開が魅力のサスペンス・スリラー。

単なる謎解きではなく、“嘘をつき続ける人生”が生むスリルと危うさを描き、ミステリとは一味違う作品に仕上がっています。

誰が何を知り、誰が騙されているのか。

巧みに張り巡らされた嘘の先に待つものとは?

今回はこの作品の感想を綴っていきたいと思います。

タイトル:『ほんとうの名前は教えない』
著 者:アシュリィ・エルストン
翻 訳:法村里絵
発行日:2024年8月30日
出版社:東京創元社/創元推理文庫
ページ数:492ページ

Original Title:『First Lie Wins
Author: Ashley Elston
Publication Year: 2024
Country: United States

簡単あらすじ

エヴィは謎の男「ミスター・スミス」の指示のもと、他人になりすまして生きる女性。

新たなターゲットとして富豪のライアン・サムナーに近づくが、次第に計画が狂い始める。

さらに、自分そっくりの外見で私の本名を名乗る女性が、私の経験を語っているという信じがたい事態に直面し、嘘と真実の境界が崩れていく。

いったい彼女の目的は何なのか?

嘘の上に築かれた世界で生き残るのは誰か?――予測不能なサスペンススリラー。

原題の”First Lie Wins” の意味を考える――最初の嘘がすべてを決める?

“First Lie Wins” が原題になっているこの小説。一見ことわざのように思えますが、実際には著者が生み出したフレーズのようです。

直訳をいくつか考えてみると、

  1. 「最初の嘘が勝つ」
  2. 「最初についた嘘が勝利する」
  3. 「最初に嘘をついた者が勝つ」
  4. 「最初の嘘が成功すれば勝ち」
  5. 「最初の嘘が通ればすべて思い通り」

といったニュアンスが浮かびます。

つまり、このタイトルが示しているのは 「最初の嘘がすべてを決める」 ということでしょうか。

最初につく嘘を信じ込ませることができれば、その後はスムーズに進む。逆に、しくじってしまえば、辻褄合わせに追われミッションは失敗に終わる・・・・。

実際、作中では 最初ファーストライがとおれば、あとはよしウィンズというセリフで登場します。そう、これが First Lie Wins というタイトルの核心を表している一文です。

エヴィの生き方そのものであり、彼女が 他人になりすます上で最も重要なルール。

First Lie Winsには、この物語が持つサスペンスの本質が凝縮されています。

邦題『ほんとうの名前は教えない』ーータイトルの意図を考える

原題 First Lie Wins は「嘘」を前面に押し出したタイトルですが、邦題は少し異なる印象を受けました。

『ほんとうの名前は教えない』というフレーズには、単に嘘をつくこと以上に、「本当の名前(正体)を隠し続けること」 に焦点が当てられているように思います。

作中では、エヴィが何人もの別人になりすまして生きる一方で、彼女を操るボスの正体さえも明かされません。しかし、終盤に近づくにつれ、物語が邦題の意味を帯びはじめ、その意図がより明確になっていきます。

タイトルを見ると、原題は「嘘の勝敗」を強調しているのに対し、邦題は「正体を明かさないことの重要性」に重きを置いているように思えます。 物語の展開を考えると、両者の視点の違いが興味深く、その対比が印象に残りました。

ここが面白かった!

後半の展開の加速感
前半は静かにエヴィの潜入生活が進むものの後半からは怒涛の展開。張り巡らされた伏線が次々と回収され、気づけばページをめくるスピードも上がっていた!

心理的駆け引きの妙
ただの嘘じゃない。誰が何を知っていて、誰が騙されているのか。視点が変わるたびに、登場人物への見方も変わってくる。

エヴィという主人公の運命
“自分を偽り続ける人生”って、どんな気分なんだろう? 彼女の視点で読むと、”嘘をつくことのスリル”と同時に、”本当の自分がわからなくなる怖さ”を感じました。

気になった点
途中までの展開がゆっくり感じた人もいるかも? でも、その分後半のスピード感が際立つ。

著者紹介

アシュリィ・エルストン(Ashley Elston)

  • アメリカの作家
  • 元ウェディング・フォトグラファー
  • ルイジアナ州在住

アシュリィ・エルストンは、ヤングアダルト(YA)小説で知られる作家。元ウェディング・フォトグラファーという異色の経歴を持ち、国際スリラー作家協会賞(YA小説部門)の最終候補ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー入りを果たしました。

代表作に 
10 Blind Dates
The Rules for Disappearing  などがあり、

2024年には初の大人向けサスペンス
『 First Lie Wins』(邦題『ほんとうの名前は教えない』) を発表。

こんな人におすすめ

エヴィの視点から描かれる騙し合いのスリルが味わえる一冊。

嘘や偽りの中で繰り広げられる心理戦が好きな人におすすめです!

嘘と正体が絡み合うスリリングな物語でしたよ

thank you