感想|『香君』はストーリーも装丁も美しい本

香君の表紙

上橋菜穂子さんの『香君』を読みました。

香君の読み方は「こうくん

上巻(西から来た少女)が435ページ

下巻(遙かな道)が451ページ

読んだきっかけ

まず『香君』の表紙の花や稲、色や鳥や蝶がとても美しく、

ストーリーは関係なく、思わずジャケ買いしてしまいました。

上橋菜穂子さんの作品ドラマで『精霊の守り人』を観たことはありましたが、を読むのは今回が初めてです。

ジャンルでいうと児童文学になるんですね。

この本は表紙を眺めているだけで満足だったので、本棚に飾りつづけて早一年。

上巻下巻のボリュームもあって、なかなか手が出せなかったけれど、ついに読みたい気持ちが溢れてきました。

たぶん、読みたくなった理由は

ミステリーものばかり読んでいたから。

推理するのはおもしろいけれど、殺人事件や人の感情のどろどろした部分に触れすぎ、癒されたくなったのかもしれません。

結論

もっと早くに読めば良かった。

とても引き込まれる物語でした。

あらすじ

【上巻】

遥か昔、ウマール人は奇跡の稲と呼ばれるオアレ稲を用いて大帝国を築き上げた。

帝国にオアレ稲をもたらしたのは香りで万象を知る香君さま

あるときヨマという害虫が大量に発生し、稲が荒らされ、餓死者が出た。

時を同じくして帝国に現れたのが、物語の主人公であるアイシャという少女

アイシャにも、香君さまと同じ香りの声を聞く能力がある。

香君さまとアイシャは、オアレ稲に秘められた秘密をさぐっていく。

いいところで終わるので、すぐに下巻が読みたくなります

【下巻】

オアレ稲が害虫によって枯れ、たった一つの穀物に依存しきた人々は食べ物を失いかけている

どうやったら稲も人々も救えるのか。

植物たちが発するさまざまな声を聞きながら、アイシャたちは危機を救おうと奔走する。

香君こうくんとはなんなのか

香君とは

香りで万象を知る神のこと

  • 人でありながら神である存在。
  • 代々女性で受け継がれていて、香りを感じ取れる人。
  • 人並外れた嗅覚で、植物が発する香りで何を語っているのかがわかる少女。

香君に選ばれたら婚姻はできず、異性との関係を持つことを厳しく禁じられている。

香君の花のイメージ。植物が香りで語っている
花の香りの声

現在の香君は「オリエ」さま

人々の前では、正体不明の婦人として振る舞わなければならない。

しかし、オリエさまにはひそかに惹かれあっている人がいる。

主人公の少女アイシャの能力

アイシャは

香りの持つ意味がわかる

植物の香りの声が聞けるのはもちろんのこと、人から発せられる香りの声も理解できる

  • 相手が何を考えているのか
  • どういう感情でいるのか

さっきまで怒っていたり悲しんでいても、だんだん落ち着いてきたらその香りも聞き分ける。

なのでアイシャの前では、どんなに表情で嘘をついても香りでばれてしまう。

自然界の支え合い

天候、微生物、鳥、昆虫、動物、すべてが共存し生きている。

人の目には見えない地中で、植物たちは助け合って生きている。

そして人にとってはいて欲しくない虫たちも、鳥にとっては命をつなく食糧になる。

子孫を残すため、懸命に生きているだけ。

そこには無駄も害もない。

この完璧な世界に人が入ると、どうなっていくのだろう。

香君の麦畑

植物の話でありながら、人間にも通じていて、悲しくもあり、優しい気持ちになることもあり。

風に万象を読みながら、神々が生み出したこの世の摂理を教えてくれています。

万象とは

必ずしも人にとっての利益ばかりではなく、動いているすべてのものをいう

下巻に入ると、植物以外に虫たちの目線で考えることも多くなります。

そして

  • 「人口と食糧」について
  • 人口的に肥料をつくる試み
  • 初代の香君さまが禁じた〈絶対の下限〉

など、時代を問わない永遠の課題も出てきます。

相関図は下巻ではっきりしてくる

もう1人の主人公であるマシュウ

マシュウもアイシャほどではないが、香りの声が聞ける。

マシュウの血縁者3人は、山に入ったっきり帰ってこなくなる。

  • 伯父おじ(祖父の兄)
  • 祖父

この謎が解けるとスッキリする。

そしてあらためて壮大で美しいストーリだと感じました。

まとめ

ページのボリュームはありますが、文字間隔は適度な空間もありとても読みやすいです。

そして

  • ファンタジー文学が好きな人
  • 植物が好きな人

のかたにはとてもおすすめな本です。

わたしは普段はミステリを読んでいて、あまりファンタジーは読んでいませんでしたが、これからも読んでみたいと思いました。

それではまた。