こんにちは。
アメリカの小説「ひとりの双子」を読みました。
この物語は、双子の姉妹、デジレーとステラを通して、家族やアイデンティティ、人種問題、そして人生の選択を考える作品になっています。
双子は子供の頃は切っても切れない存在でした。
しかし大人になるにつれ異なる方向へと進み始めます。
その理由がなんとも苦しく切なく・・・。
原題は「The Vanishing Half」
新田啓子さんの解説で「消えゆく片割れ」と訳されています。
主な登場人物
- アデル:母
- デジレー:双子の姉
- ステラ:双子の妹
- ジュード:デジレーの娘
- ケネディ:ステラの娘
ストーリーの概要
物語は、1968年代から始まります。
デジレーとステラの住む町はアメリカの南部、肌の色が薄い黒人ばかりが住む町。
貧しさや差別に直面しながらも、二人は仲良くお互いを励まし合いながら暮らしていました。
しかしある日突然、お金がないため学校を辞めさせられ、好きでもない仕事につかされることになります。
こんな生活から抜け出したい。二人は家出を決行します。
向かった先はニューオーリンズ。
この街で、いつも一緒だった二人に転換点が訪れます。
妹ステラはここで白人男性と出会い結婚、自分の人種を隠し白人の世界で暮らすことを決めます。
そうして新しい人生を手に入れたステラですが、その決断が今後どのような影響が出るのか、この頃はまだ考えもしませんでした。
一方、姉のデジレーは、出会ったった中でいちばん肌の黒い男性と結婚し、自分のアイデンティティを受け入れることを選択します。
しかし数年後、夫の暴力がひどくなり、命の危険を感じ娘を連れて故郷へ逃げ帰ります。
そして後半、
物語の中心は双子の姉妹から、お互いの娘たちへと移っていきます。
内容は人種問題と重いテーマではありますが、登場人物たちの心理描写が細やかで、物語に入り込みやすくなっています。
そして終盤、ついに双子姉妹が再会するところまで話は進んでいきます。
考えさせられるテーマ
この小説では、アイデンティティと家族について深く掘り下げられています。
妹ステラ側では、パッシング(なりすまし)することで、人種差別の現実を避けることができました。
しかし嘘がばれることを恐れ、自分や家族に対する自己否定感で苦しみます。
また姉デジレー側では、人種内差別(カラー・ストラック)という、同胞であっても肌の色が薄いか濃いかで区別している差別認識を、故郷、夫、娘との関係で描いてあります。
感想とまとめ
物語は、人種問題に関する洞察力に富んだ描写が多く含まれています。
ステラにおいては、なぜそうまでして家族を捨てたのか・・
と考えると、
ステラには姉よりも強く明確に「自分の人生への夢」を持っていたからのように思います。
こそこそせずに自分らしく生きたかった・・・。
そして最後に、原題にあるHalf。
「片割れ」以外にも、
- 嘘と本当の2つの人生
- アイデンティティ
- 肌の色
- パッシング(なりすまし)
- トランスセクシュアル
など、いろいろなHalf(半分)が込められているのではと、そう思いました。
心に深く残る一冊です。
それではまた。
著 者:Brit Bennett/ブリット・ベネット
翻 訳:友廣純
出版社:早川書房
発売日:2022年3月26日
ページ数:480ページ