読書感想『プロヴァンス邸の殺人』一度は行ってみたい南仏でのミステリー

プロヴァンス邸の殺人

ヴィヴィアン・コンロイのミステリー小説『プロヴァンス邸の殺人』を読みました。

原題:『MYSTERY IN PROVENCE』2022年

著者:VIVIAN CONROY

訳者:西山志緒

発売日:2024年1月20日

出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン

ページ数:477ページ

表紙のラベンダー畑が目を引きますね。行ってみたくなります。

簡単なあらすじ

本作はヴィヴィアン・コンロイの「ミス・アシュフォード・インベスティゲイツ」シリーズの一作目です。

この物語は1930年代のプロヴァンスが舞台。

プロヴァンス邸の殺人

ヒロインのアタランテ・アシュフォードはスイスに住んでいましたが、ある時、パリで暮らす祖父が亡くなり、遺言で莫大な財産を受け継ぐことになります。

ただしそれには一つ条件があり、祖父の職業であった探偵業を継ぐこと・・・と。

アタランテは承諾し、新しい生活をパリの豪邸で始めることになりますが、その初日にさっそく探偵の依頼が入りこみます。

そして依頼者に同行し南仏のプロヴァンスへ。

果たして初めての探偵業、教師だった彼女がどう解決していくのか・・・・。

主人公のキャラクター


主人公のアタランテの最初の職業は音楽とフランス語の教師でした。

その後、祖父から探偵業を引き継ぐことになります。

教師→探偵

教師から探偵という異業種への転職は驚きですが、アタランテの知恵と投げ出さない勇気を見ると、彼女は初めから探偵としての資質を持っていたのではないかと思わせるほどです。

元々空想好きであり、考え続けることが容易にできる彼女ですが、でもやっぱり好きなことを空想するのと謎を解くのでは少し頭の使い方が異なってくる・・・。

感情って、焦った時とかピンチの時に、なぜかうまくいかない方へと走ってしまうことってありませんか?

例えば形勢が悪くなると良い条件を提示されてあっさり合意してしまったり、「あの人は優しいから」といった理由で自分の思いたいように解釈してしまったり。

しかし、探偵業では他人の人生を背負っているため、都合の良い憶測や他人の言葉に誘導されることは危険です。「なぜだろう?どうして?」と追求する気持ちを忘れてはいけません。

そんな時、祖父にならい「働かせるのは感情ではなく頭脳だ」と自分に言い聞かせながら進めていくところは、アタランテの新たな挑戦に対して冷静に対処する姿勢が感じられてよかったです。

アタランテという名前

アタランテという名前は、ギリシャ神話に登場する伝説の女戦士アタランテに由来しており、自分の人生を自分で切り開いていって欲しいという両親の思いが込められています。

物語の中では神話が頻繁に登場し、アタランテ自身も『イリアス』や『変身物語』などの神話を愛読していますよ。

舞台はプロヴァンス

舞台は南フランスのプロヴァンスのベルビューで、よく登場する場所が貝殻洞窟。

ベルビューは、「美しい景色ベルビュー」からきている架空の土地です。

本当にありそうな良い名前ですよね。

この貝殻洞窟は、17世紀に建てられた由緒正しい場所で、ローマ神話をモチーフにしている・・となっています。

ここで何か起きるんじゃないかとドキドキさせられる謎めいた場所です。

プロヴァンス邸の殺人

プロヴァンスといえば、

夏のラベンダー畑やアヴィニョンの教皇庁、アルルの跳ね橋やローマ遺跡などが有名ですね。

印象派の画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホやポール・セザンヌなどが滞在したことでも知られている場所です。

総評

「プロヴァンス邸の殺人」は、上流階級の人々を相手に、新米探偵アタランテが根気強く犯人を突き止めていく物語です。

探偵というよりも、好奇心で謎を推理していく・・・といった方がしっくりくる様にも思いました。

1930年代のヨーロッパ上流階級クラスの方々の思考もリアルでした。

美しいプロヴァンスを舞台にした安心して読めるコージーミステリー。

第2弾はヴェネチア観光におとづれていたアタランテが、ヴェール姿の女性から「サントリーニ島で起きた娘の事故死について調査してほしい」という依頼を受けるストーリー。

次回はイタリアギリシャで活躍するみたいですね。

翻訳されて読めるようになる日を楽しみに待ちたいと思います。