感想ヒュー・コンウェイの『コールド・バック』はロマンス?それともサスペンスの傑作?

コールド・バック

141年の時を経て、ついに邦訳されたという『コールド・バック』を読みました。

『コールド・バック』は1883年の作品ということで時代背景が難しいのかなと思いましたが、そんな心配は必要ありませんでした。

物語は主人公の手記という形で進みますが、ロンドンからイタリア、そしてシベリアまで、彼の旅のスケールは壮大です。

特にシベリアでは、何が起こるかわからない緊張感があり、ハラハラしながら読み進めました。

原著『Called Back』は、累計25万部以上を売り上げたベストセラーで、当時の読者が熱狂したのも頷けます。

謎と冒険が満載のこの作品は、昔の本とは思えないほど、今でも十分に楽しめる内容ですよ。

そんな魅力たっぷりの『コールド・バック』について、これから詳しくレビューしていきたいと思います。

本と著者紹介

原題:Called Back

著者:Hugh Conway

出身:イギリス/ブリストル

生まれ:1847年

ヒュー・コンウェイは詩や短編を書いた後

1883年『Called Back』で長編デビュー

翌1884年『Dark Days』を発表

1885年病気のため37歳という若さで亡くなる。長編小説は2作のみ

邦題:コールド・バック

著者:ヒュー・コンウェイ

訳者:高木直二・門脇智子

出版社:論創社

発売日:2024年5月
ページ数:233ページ

ヒュー・コンウェイはペンネームで、本名はフレデリック・ジョン・ファーガスだよ

簡単あらすじ

視力を失った主人公は、ある日、偶然入り込んだ家で生死に関わる恐ろしい体験をする。

数年後、視力が回復した彼は、イタリア・トリノの旅行中に美しい女性と出会い一瞬で恋に落ちる。

しかし、彼女はどこか謎めいた雰囲気があり彫刻のように表情が動かない。

何か大きな秘密を抱えているように見えるのだが、彼女への愛は日ごとに深まるばかり。

コールド・バック

やがて、主人公は最初に体験した恐ろしい出来事に彼女が関わっていたことを確信し、その謎を解明すべくロンドン、イタリア、シベリアへと奔走する。

そしてついにその真実に辿りつくのだが・・・

過去の出来事が現在にどう影響を与えているのかが巧みに描かれているよ

Called Backの意味するものは

『Called Back』というタイトルですが、直訳すると「呼び戻された」という意味です。

物語の展開から考えると、このタイトルは「過去に引き戻される」ことを象徴しているのでしょう。

【記憶の呼び戻し】  

主人公は、視力を失っていた間に体験した恐ろしい出来事を思い出そうと、記憶を「呼び戻そう」とします。記憶を取り戻すことが、この謎を解くための鍵であり、不可欠な要素となっています。

運命や過去に引き戻されること

主人公が、かつて自分が関与した出来事に再び「呼び戻される」。過去の出来事が現在の行動に影響を与え、彼はその過去と向き合わざるを得ない状況に陥ります。

【死や復讐への呼び声】

登場人物が復讐心や死と向き合う場面もあります。これを「呼び戻される」という意味で捉えると、運命の力や避けられない出来事に引き寄せられていることを示唆しているようにも感じられます。

『Called Back』というタイトルが表すのは、ただの記憶や過去の「呼び戻し」だけではなく、主人公がその過去に再び引き戻され、避けられない運命に立ち向かう姿です。

過去がどんなふうに現在や未来に繋がるのか、そしてどうやって乗り越えていくのか。

そんな「呼び戻される」というテーマを通して、私たちに大切な問いを投げかけてきます。

手記形式で語られる

『Called Back』が他の小説と一味違うのは、手記形式で物語が進んでいく点です。

手記を読むことで、まるで主人公の心の中を直接覗き込んでいるかのように感じられ、自然と共感が湧いてきました。

特に、視力を失っていたときの恐怖や不安、そして視力を取り戻してから出会った女性に対する恋愛感情が、まるで私自身が体験しているかのように迫ってきます。

まさに、彼の手記を通して、私の中の記憶や感情も「Called Back」されているような感覚を覚えるのです。

時代を超えても楽しめるサスペンスとミステリーの名作

視覚や記憶をテーマにした『コールド・バック』は、時代を超えても楽しめるサスペンスとミステリーの名作だと感じました。

一見ロマンスの要素も含んでいますが、私が最も強く感じたのはサスペンスの緊張感です。

主人公が過去の記憶を追いながら真実を探るその緊迫感、そして国を超えて展開されるスリリングなストーリーは、最後まで目が離せませんでした。

しかし、ただのサスペンスにとどまらず、登場人物たちの感情や関係性も物語に深みを加えており、そこにロマンスの余韻を感じさせる部分もあります。

つまり、この作品はロマンスとサスペンスが絶妙にバランスを保っているのです。

だからこそ、140年以上経った今でも『コールド・バック』が多くの人に楽しんでもらえる作品だと感じました。

こんな人におすすめ

視覚障がいや記憶喪失といったテーマを軸に、登場人物の内面や心の葛藤が丁寧に描かれているため、心理描写や人間の心の動きに興味がある方に特におすすめです。

また、サスペンスとロマンスが絶妙に織り交ぜられた物語なので、ミステリーのスリルを味わいながら、感情の揺れ動きを感じたい方にもぴったりですよ。

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