こんにちは。
シヴォーン・ダウドの『ロンドン・アイの謎』を読みました。
この本はイギリスにあるロンドンアイという巨大観覧車から、こつ然と姿を消した少年を探し出す、謎解きミステリ本です。
主人公は特別な頭脳をもった12歳のテッド。
その頭脳については「症候群」とだけ表されています。
訳者あとがきでは「アスペルガー症候群」のことではないかと書かれています。
(現在ではこれを「自閉スペクトラム症」と呼ばれることが多いそう)
シヴォーン・ダウド(著)
越前敏弥(訳)
出版社 東京創元社
発売日2022年7月15日
主な登場人物
- テッド12歳・・気象学の知識が桁外れの男の子
- カット14歳・・行動力抜群のテッドの姉
- サリム13歳・・インド系の父を持つ従兄弟
あらすじ
姉のカット、弟のテッド、いとこのサリムは観覧車に乗るために行列に並んでいた。
そのときに近寄ってきた見知らぬ男からチケットを1枚あげると言われる。
3人はもらっていいものか迷ったけれど、受け取ることにする。
チケットは1枚しかないので誰が乗るか話し合った結果、まだ乗ったことがないサリムが使うことに決定。
11時32分、サリムは乗り込む。
1周は30分。
12時2分、サリムが出てこない・・・
ちゃんと見ていたのにどうして?
観覧車の中からどうやって消えたの?
「ほかの人とはちがう」優秀な頭脳をもったテッドが、サリムを探し出すための謎解きが始まる。
テッドの特徴
将来の夢は気象予報士になること。だからお天気の知識はかなりのもの。
ほかにも得意なことは以下の3つ。
- 数を数える
- 時間を計る
- 何かを考え続ける
ただし人の気持ち(感情)がわからない。だから学校の先生から人の表情を見るときの基本ルールを教わっている。
サリムがどんな顔をしていたか思い出しながら、いろいろ考えるテッド。
謎解きの核は「どう見るかによってちがう」ということ
サリムを1人で観覧車に乗せたことを後悔しているテッドとカットは、ぜったいに探し出すと夜も考え続けます。
考えることはテッドが中心ですが、姉のカットの行動力なしでは話は進みません。
ときに親に嘘をついてでも出かけて行き、2人はいくつもの検証をくり返します。
何度も何度も検証していくうちにふと思いつく。
ひとつのことでも同時に正反対のことが存在するんじゃないか?
例えばグラスの水。
「まだ半分ある」と「もう半分しかない」の正反対の存在。
勝手にそうだと思い込んではいないか?
原点に戻ってもう一度考えてみよう。
サリムは観覧車に
乗ったのか乗っていないのか?
降りたのか降りていないのか?
消えたのか消えていないのか?
どんどん考え方が柔軟になり、仮説と行動力と発見が加速されていきます。
謎解きだけではない人間の心にもフォーカスしている
子どもでも大人でも、人間は大なり小なり生きづらさを抱えていることってありますよね。
この物語の登場人物にもさまざまな要素が込められていました。
それは学校でのいじめであったり人種差別であったり親子関係であったり。特にサリムは父親がインド系ということで、学校でいじめられ心が傷ついている。
当事者になってみないと、なかなか気がつけないことって多いですが、
人の気持ちで無視してはいけない部分、
話し合うことの大切さ、
そういうことを自然と噛みしめられる作品になっています。
まとめ
『ロンドン・アイの謎』は恐ろしい事件が出てこない、謎解きを純粋に楽しむストーリー。
とくに小中高生におすすめ!
もちろん大人も楽しめます。
人間関係や親子関係を考える要素もたくさん詰まっていて、またテッドたちに会いたくなる本でした!
おまけ
これを読んだあと、Amazonプライムのオススメで出てきた『無垢なる証人』という映画をみました。
こちらは自閉スペクトラム症の子を描いた法廷サスペンス映画で、ヒロインの無垢さにもうほんとうに心が洗われました。
テッドとの共通点もたくさん発見。
よかったらチェックしてみてくださいね!