感想|アンソニー・ホロヴィッツの『その裁きは死』THE SENTENCE IS DEATH

ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第2弾『その裁きは死』を読み終えました。

前作『メインテーマは殺人』でも日本に関する話題がちらっと登場しましたが、今回はそれ以上に日本文化が物語に深く絡んでおり、海外ミステリーを読みながら日本の要素に触れられる新鮮さにワクワクしました。

今回は緑煙色で書き残された数字の「182」が何やら事件に関係しているのですが、その真相は伏せつつ、私なりの感想をこれからお伝えしたいと思います。

タイトル:『その裁きは死』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ
翻訳者:山田蘭
出版年:2020年
発行所:東京創元社
ページ数:457ページ
形式:文庫本

Original Title: 『The Sentence Is Death
Author: Anthony Horowitz
Publication Year: 2018
Country: United Kingdom
Genre: Mystery, Crime Fiction

簡単あらすじ

弁護士リチャード・プライスが、ワインボトルで頭を殴られ殺害される。

現場には「182」という謎めいた数字が残され、複雑な人間関係と隠された真実が浮かび上がる中、探偵ホーソーンと作家ホロヴィッツが再びタッグを組み、この不可解な事件の真相に挑む。

過去の行いが引き金となったのか、それとも別の意図が潜んでいるのか。本格ミステリーとメタフィクションが融合した、驚きの結末が待つ第二弾!

タイトルの「その裁き」という表現の限定性について考える

原題は『The Sentence Is Death
邦題は『その裁きは死』

「Sentence」という言葉には、「判決」「文章」「宿命」といったさまざまな意味があり、それぞれが物語のテーマやプロットに深く結びついていると感じました。

このタイトルからは、単なる「死」という結果だけではなく、それを引き起こした言葉や選択、過去の行いがどのように人の運命を決定していくのか、という問いを読者に投げかけているように思います。

その「Sentence」という言葉が事件や登場人物の運命にどのように絡んでいくのか・・・その辺りが作品をより深く楽しむキーポイントとなりそうです。

ホーソンが参加している読書会

さて、一作目の『メインテーマは殺人』に続き、今回もホーソーンが読書会に参加するシーンが登場します。

課題本はシャーロック・ホームズの『緋色の研究』

私も読書会に参加しているので、本の中とはいえ、どんな人が集まっているのか、進行はどうなっているのか、どんな内容が話し合われているのか。そういった部分がとても興味深く、この場面を読むのが一番の楽しみになってきています。

この読書会の参加者や会話から、事件のヒントが出てくるのでしょうか?そんな期待を胸に読み進めています。

ドーント・ブックスなどいろいろな名所が登場

<DAUNT BOOKS/ドーント・ブックス>

『その裁きは死』には、世界の美しい本屋さんの一つとして名高い<DAUNT BOOKS/ドーント・ブックス>が、作中のトークショー開催場所として登場します。

ドーント・ブックスはロンドンの古風なマリルボーン・ハイ・ストリートにあり、最寄りの地下鉄Baker Street駅から徒歩6分という立地。

深い緑色の外観がトレードマークで、店内には独特のクラシックな雰囲気が漂います。

この深い緑色の看板と、今回の事件で鍵となる数字の緑煙色(深い緑色)は何か絡んでいるのかいないのか?

色彩の象徴性にも注目したくなる場面です。

<長路洞/ロング・ウェイ・ホール>

物語の中枢として描かれるのが、イギリスのヨークシャー地方に位置する「リブルヘッド(Ribblehead)」にある架空の洞窟、<長路洞/ロング・ウェイ・ホール>です。

リブルヘッド自体は実在する場所ですが、長路洞は架空の設定。

しかし、読んでいるとまるで本当に存在するかのようなリアリティがあります。例えば、「スパゲッティ交差路」「ドレイクの抜け道」など、具体的な描写がこちらの想像を一層掻き立ててくれるのです。

実在のリブルヘッドは観光地として有名で、「リブルヘッド高架橋(Ribblehead Viaduct)」がその代表的な見どころだそうです。全長約400メートル、高さ約32メートル、24のアーチで構成された壮大な石造りの橋は、19世紀に建設され、現在も鉄道が運行されています。

架空と現実が交錯するリブルヘッド。いつか行ってみたくなります。

キングス・クロス駅

キングス・クロス駅の正面コンコース近くには、ハリー・ポッターシリーズに登場する「9と3/4番線」を模した記念スポットがあるそうです。

このスポットは物語の中でもちらっと登場し、イギリス文学がふんだんに散りばめられた作品ならではの魅力を感じさせます。

こうした細やかな要素が、読書をより楽しい体験にしてくれるのが嬉しいですね。

感想

今回も、ラストに近づくにつれて伏線が次々と回収され、本当にどの行動も、セリフも無駄がなく、まさに素晴らしいの一言でした。

悲しさ、恨み、愛するがゆえの行動・・・。

どれも人間が持つ行動心理そのものだと感じられ、だからこそ、それらの描写がすっと心に染み込んできました。

最後には、なんとも言えない感情が静かに湧き上がり、この作品がある種の愛情を描いていることに気づかされました。

次の作品もどんな物語が展開されるのか、今から楽しみです。

こんな方におすすめ

『その裁きは死』は人間の心理や感情を深く掘り下げたミステリー。

心理描写を重視する方にぜひ読んでほしい一冊です!

<おまけ>
巻末の大矢博子さんの解説によると、ホロヴィッツ氏は2019年5月にロサンゼルス公共図書館で行われたインタビューで、島田荘司さんの『斜め屋敷の犯罪』を愛読していると語っていたそうです。こうして日本の作品が紹介されると、なんだか嬉しくなりますよね。『斜め屋敷の犯罪』は本当に想像を超えたトリックが魅力的で、こちらもぜひ一度手に取ってみてほしい作品です。

thank you