ピーター・スワンソンの『8つの完璧な殺人』を読了しました。
この作品は、ミステリーファンにとって頭をフル回転させられる一冊です。なぜなら、8つの名作ミステリーがオマージュとして登場するからです。
8作品の全て、あるいはいくつか読了している方は、一層味わい深くミステリーを楽しめることでしょう。ただし、一つも読んでいなくても問題なく楽しめますよ(私がそうだったので)。
ただ、やっぱりどうしても一部ネタバレが含まれているため、「次回これを読もう!」と思った作品があった場合、
・その箇所だけはさらっと読み飛ばす
・忘れた頃に読む
などの対策が好ましいかもしれません。
さてさて、この物語は、
ボストンのミステリー専門書店の店主が、かつて自身のブログで紹介した「完璧な殺人8選」を模倣した連続殺人事件が起きてしまう・・・というスリリングなストーリーです。
個人的には「ミステリーの専門書店」というだけで、引き寄せられる設定です。そんな書店があったら絶対に入ってみたい。
邦題:『8つの完璧な殺人』
著者:ピーター・スワンソン
翻訳:務台夏子
発行日:2023年8月10日
出版社:東京創元社/創元推理文庫
Title: 『Eight Perfect Murders』
Author: Peter Swanson
Country of Origin: United States
Year of Publication: 2020
それでは、これから感想を述べていきたいと思います。
リストに選ばれた8選+1
まず最初に、作中でオマージュとして登場する8作品をご紹介します。
【作中で言及される8つの作品は以下の通り】
- 『赤い館の秘密』(1922年) A・A・ミルン
- 『殺意』(1931年 )アントニイ・バークリー(邦訳はフランシス・アイルズ名義)
- 『ABC殺人事件』(1936年) アガサ・クリスティ
- 『殺人保険』(1943年) ジェイムズ・M・ケイン
- 『見知らぬ乗客』(1950年) パトリシア・ハイスミス
- 『溺殺者』(1963年)『原題 The Drowner』 ジョン・D・マクドナルド(邦訳なし)
- 『死の罠』(1978年) アイラ・レヴィン(戯曲、邦訳なし)
- 『シークレット・ヒストリー』(1992年) ドナ・タート(別邦題『黙約』)
+1(8選には選ばれていないけれど後で出てくる作品)
- 『アクロイド殺害事件』(別タイトル『アクロイド殺し』)
簡単あらすじ
主人公は、ボストンでミステリー専門書店「オールド・デヴィルズ・ブックストア」を営むマルコム・カーショー。
彼はかつて、自身のブログで「8つの完璧な殺人」というリストを作成し、ミステリー史上、最も巧妙で完全な殺人計画を描いた8作品を紹介しました。
ところが、そのリストを模倣した連続殺人事件が発生し、FBI捜査官のグウェン・マルヴィがマルコムに協力を求めます。
マルコムは渋々捜査に協力するものの、次第に彼自身の過去や隠された秘密が浮き彫りになり、事件の中心へと引き込まれていき・・・・。
『8つの完璧な殺人』の魅力
①名作ミステリーへのオマージュ
次々と8作品がオマージュとして登場し、ピーター・スワンソンのミステリー愛と巧妙なプロットに感動させられます。また、次に読みたい本のリストとしても楽しめます。
②現実とフィクションの交錯
書店主のブログで紹介した「架空の犯罪リスト」が現実世界で模倣されるという斬新な設定。全く接点がなさそうなのに、次第に犯人像が見え始めてくる・・・そこまでするとバレるのではないか?というスリルが生まれてくる。
③主人公の心理描写
主人公マルコムの過去や、彼の語りに潜む曖昧さが「彼は本当に信頼できるのか?」という疑念を抱かせ、緊張感を高めます。展開にはハラハラしました。
④予測不能な展開
結末まで飽きさせません。
⑤その他の書籍
8選以外の名作たちも豊富に登場。ハリー・ポッターで有名な作家の別名義で書かれたミステリー小説を知ることができて面白かったです。
読後の感想
『8つの完璧な殺人』は、ミステリー名作へのオマージュが光るスリリングな一冊でした。
8作品を未読の私でも問題なく楽しめましたが、ネタバレが若干含まれるので、これから読む予定の方は注意が必要かもしれません。
『8つの完璧な殺人』は、いつもと一味違うミステリー読書体験が楽しめる作品です!
私は、パトリシア・ハイスミスの『見知らぬ乗客』が読みたくなりました